アパレル界の怖い話 〜第一章〜

フィクションだと思って読んで貰えればいい

アパレル界の怖いお話

〜第一章〜

『ボディ泥棒』

あるところにAという若者が居た

Aは今時珍しく服作りや物作りに熱心な男で

T−シャツのグラフィック一つ作るにも世にあるフォントをそのまま使うような事はせず

全箇所弄ったり、サイズ感やプリント位置、インクの配合までとことん追求して作るような男だった

そんなAが作った物を並べて展示会をする事になった

自分が考え抜いて出来た素晴らしいと思える物をより多くの人に見てもらう機会が必要になった

Aは在り物を使い作るのも好きだった

(ここで言う在り物とは要するにボディとしてもう存在する物、既製品、無地のT-シャツやパーカー等)

なぜなら在り物には在り物の良さがある事を知っていた

そりゃそうだ、ボディをずっと作ってきた会社には一発物には無い安定感や生地の風合い経年変化した時の色気がある

しかもある程度値段が下げれる事によりより多くの人に手に取って貰いやすくなる部分も考えていた

ただそこは物に拘るAの事だ

世に無数とある在り物の中から簡単に選ぶ事は出来なかった

T−シャツなら各社の白、黒、杢グレーを同じサイズ取り寄せ

サイズ感、生地感、洗濯後の変化、耐久性、ロットによる生産国の違いが生む個体差等

実際に着ては洗ってを繰り返し情報を蓄積していった

(因みに何故上記の三色かと言うと色によりサイズ感がまず違うのと混率の違いによる変化の差を知る為、実際には色も会社毎に全て違う)

そんな事を高校生ぐらいから続けていたAには国内に出回るほぼ全てのボディの情報が入っていた

そんなAが作るからにはAはグラフィック同様ボディにも拘った

乗せるプリントのグラフィックや意味合いによってボディを変えた

扱われ方から最終の姿まで全てを想像し型毎に最適なボディを選んだ

それは『高校生が文化祭用に作るT−シャツみたいなもの』と『ブランドとして人様からお金を払って買って頂くもの』との明確な違いを見せないと失礼だと思っていたからだ

そんなこんなでアイテムが出揃い

展示会を開催する事になった

案の定極々一部の服好き以外の人にはAのその拘りは伝わらなかった

Aはそれでも良かった

分からなくても着て洗って長くその服と付き合えば自ずと今は分からない人達にも分かる時が来るだろう、自分で気付いた時が一番楽しい瞬間だと

そんな時ある御一行が展示会にやってきた

新たにお店を始めるらしく取り扱いブランドを探してるバイヤーやディレクター、スタッフとの事だった

Aは自分が最善、最良だと考え抜き表現した物がより多くの人に伝わる機会になるのならとその御一行に説明をした

その御一行はハンガーラックの中から何点かを選び一着づつ写真を撮り出した

一通り見回し『ではまた』とその御一行は帰って行った

そこからAに連絡は無かった

その後御一行のお店はオープンした

お店でオリジナルブランドも始めるらしいと噂が回ってきた

SNS上で回ってきたそのオリジナルブランドの服の画像を見てAは固まった、、、

Aが展示会でその御一行に見せたのと全く同じボディだったのだ

Aは画像だけでもステッチや各所の仕様を見てどこのボディか判別出来る

間違いなく同じ

しかもAが出してた2倍の価格で売られていた

世の中には数多くのボディが存在する

偶然同じボディになる事もあるだろうが虫が良すぎる

『俺の展示会に何しに来た?、、、、ボディ泥棒じゃねーか』

Aはぽつりと呟いた

 

ー終わりー

 

これはあなたの近くでもあるかも知れないアパレル界の怖いお話

あなたが知らずに買ったその服は誰かの知識が盗まれて作られた泥棒の作品かも知れません